航空講座

第二回:管制用語の基礎知識


はい、では今回は航空管制用語の
基礎知識を勉強しましょう。
.....。
こうくうかんせい?
英語?
あ、あたし帰る。
楓ちゃん、基本さえ覚えておけば、
そんなに難しい物じゃーないのよ。
日本国内ならパイロットも管制官も
ほとんど日本人なんだし。
でもぉー。管制用語は英語ですよねー。
なんで英語って決まってるんですかぁ?
日本語じゃー駄目なんですか?
そうねぇ・・・。英語が使われるのは航空発祥の
地がアメリカだって事も大きな理由の
一つね。ICAO(国際民間航空機関)では
「管制用語は英語又は母国語とする。
または、これに代わる共通語とする。」
と規定されているの。なんか、フランス人は
「なんでフランス語で統一しないんだ」って
怒ってるらしいわね(笑)
え?母国語って日本語でもいいの?
そ。航空無線を聴いてると、たまに
「日本語で申し上げます、現在空港は・・・」とか
言ってるわよ。まあ、緊急の場合とかは母国語の
方が断然コミュニケーション取り易いものね。
で、これが電波法に定められている欧文通話表
です。「和文通話表」というのも有るけど、
とりあえず、今回は欧文だけ紹介します。
うーん、あるふぁー、ぶらぼー、・・・・ナニコレ?
AとかBとかのアルファベットは聞き違いの
恐れがあるから、例えば航空路の名前とか、
航空機の識別符号とかに使用されている、
重要な符号なんかを正確に伝える目的で
設定されているのね。航空無線に限らず、
全ての無線で共通の通話法なのよ。
ずーっとこれが使われてたんですか?
これより古いタイプが存在したけど、数十年前に
より認識率が高い、現在の物に変更になったの。
欧文通話法
A alpha
(アルファ)
N november
(ノーベンバー)
B bravo
(ブラボー)
O oscar
(オスカー)
C charlie
(チャーリー)
P papa
(パパ)
D delta
(デルタ)
Q quebec
(ケベック)
E echo
(エコー)
R romeo
(ロメオ)
F foxtrot
(フォックストロット)
S sierra
(シエラ)
G golf
(ゴルフ)
T tango
(タンゴ)
H hotel
(ホテル)
U uniform
(ユニフォーム)
I india
(インディア)
V victor
(ビクター)
J juliet
(ジュリエット)
W whisky
(ウイスキー)
K kilo
(キロ)
X x-ray
(エックスレイ)
L lima
(リマ)
Y yankee
(ヤンキー)
M mike
(マイク)
Z zulu
(ズルー)
次はこれ。数字の通話法ね。
これも、聞き違いが有ったら大変なので、英語は
世界共通でこの方式に従ってるの。
ワン、ツゥー、スリー・・・なーんだ、
いちいちこんな事決めなくても、誰でも判るわよ
・・・あれ?「ナイナー」って何?「ナイン」じゃ
ないの?
ああ、それね。それは、ドイツ語で、
「いいえ(違います)」の事を「ナイン」と発音
するので、混乱が無いように「ナイナー」という風に
発音するようになっているの。共通語以外の
言語に配慮している所が面白いわね。
じゃあ、例えば「JA 8991」というコールサインが
有ったら、どう発音するかしら?こずえちゃん。
え、えーと・・・。
「ジュリエット・アルファ・
エイト・ナイナー・ナイナー・ワン」
・・・でいいですか?
はい、ご名答!
数字の通話法
数字 英語 日本語
ワン ひと
ツゥー
スリー さん
フォー よん
ファイブ
シックス ろく
セブン なな
エイト はち
ナイナー きゅう
ゼロ まる
100 ハンドレッド ひゃく
1000 サウザンド せん
.(小数点) デシマル(ポイント) てん
じゃー、次はこれ。ここからが本格的な
航空用語になるわよ。
この表は、世界各国で特に頻繁にパイロットや
管制官達に使われているとってもポピュラーな
航空用語なの。
とほほー。随分いっぱい有るんだね・・・。
でも楓ちゃん、これを一通り覚えておけば、
世界中どこに行っても通用するのよ。
もちろん、この他にも色々あるけど、
まずはこの表を覚えておけば、最低限の
コミュニケーションは図れるの。
ホントにこれだけでいいんですかぁ?
うーん、アメリカなんかだと、結構通常会話
が入ったりするけど、日本国内ならまず、
これさえ押さえておけば問題ないわね。
ま、後は慣れかしら。パイロットの場合、機体の
操縦や他機の監視なんかも入ってくるから
結構大変といえば大変ね。
うーん。この中で知ってるのは「ラジャー」位
かなー。他は全然知らなかった。
この中でも、特に頻繁に耳にするのが
「Cleard」(許可する)
「Approved」(許可する)
「Affirm」(はい、その通りである)
「Negative」(いいえ、違う)
「Read Back」(復唱せよ)
「Request」(要求する) かな。
あれ?「Cleard」(許可する)
「Approved」(許可する)は
同じ意味じゃないんですか?
ああ、これね。
これは、どちらも管制官のみが使用する用語
なんだけど。「Cleard」(許可する)は、離陸と
着陸,それに航路に関する許可をするときにだけ、
使用されるの。「Approved」(許可する)の方は
パイロットからの「Request」(要求する)が
有ったときに、その要求を許可する時に使うのよ。
へー、結構ややこしいんだー。
離着陸の時が航空機にとって一番緊張する時間帯
だから、他の交信と混同しないように
配慮されているのね。離陸と着陸で接続詞迄
違うのよ。離陸は「Cleared for Takeoff」なのに対し
着陸は「Cleared to Land」なの。
更にこれには必ず風向とその強さも付されるから、
とても特徴的ね。
「JA5315 Cleared for Takeoff Wind 150 at 6kt」
とかいう具合にね。
よく使われる航空用語
Acknowledge
アクノゥレッジ
受信証送れ 通信の受信証(受信し
た確認の返答)を送れ
Affirm
アファーム
はい その通りである
Approved
アプルーブド
許可する 要求事項について
許可する
Break
ブレイク
ブレイク 当方はこれより通報
の各部の区別を示す
Break Break
ブレイク ブレイク
ブレイク 
ブレイク
送信多忙に付き、当
方は、このまま他局
と交信する。返答は
不要である
Cancel
キャンセル
キャンセル 先に発出した許可又
は承認を取り消す
Check
チェック
チェック 装置又は手順を調べ
直せ
Cleared
クリアード
許可は承認
する
条件を付して許可又
は承認する
Confirm
コンファーム
確認せよ 当方が受信した内容
は正しいか?又は
正しく受信したか?
Contact〜
コンタクト
交信せよ 〜と交信せよ
Correct
コレクト
その通りで
ある
貴局の送信は正しい
Correction
コレクション
訂正する 送信に誤り有り。
訂正する
Disregard
ディスリガード
取り消す 当方の送信を
取り消す
Go ahead
ゴーアヘッド
送れ 送信せよ
How do you
read
ハウドゥユゥリード
感度はどうか 当方の感明度は
どうか?
I say again
アイセイアゲイン
繰り返す 当方はもう一
度繰り返し送
信する
Monitor〜
モニター
聴取せよ 〜の周波数を
聴取せよ
Negative
ネガティブ
違う 違う。承認されない
又は正しくない
Read back
リードバック
復唱せよ 当方の通信を
受信した通り
復唱せよ
Report〜
レポート
通報せよ 〜について通報せよ
Request〜
リクエスト
要求する 〜について要求する
Roger
ラジャー
了解 当方は貴局の通報を
全部受信した
Say again
セイアゲイン
繰り返せ もう一度送信せよ
Speak slower
スピークスロワー
ゆっくり送れ ゆっくり送信せよ
Stand by
スタンバイ
スタンバイ 当方が呼ぶまで
送信を待て
Verify
ベリファイ
確認せよ (高度を)確認せよ
Wilco
ウィルコ
了承 了解、指示に従う
(Will complyの略)
Words twice
ワードトゥワイス
二度づつ
送れ/送る
通信困難。二度づつ
送れ/送る
次は航空界で使われている単位についてです。
この業界では、私たち日本人が慣れ親しんでいる、
「メートル法」ではなく、アメリカなどが使用している
「ヤード/ポンド法」が使用されています。
あちゃー。英語だけでも頭痛いのに、単位まで
まるで違うのー?
まあ、こればっかりは仕方が無いわねー。
所でいぶきさん、時間の所の「Z」(ズルタイム)って
なんですかぁ?
ああ、それね。飛行機はその速度と国際性から、
世界ドコでも「世界標準時(GCT)」を使っているの。
その基準になるグリニッジ時間を「Z(ズル)」という
風に呼んでいるわ。ちなみに日本は、グリニッジ
標準時より9時間進んでいるから、例えば
「00:00Z」の時には日本時間は「09:00i」
になるの。(日本時間は「I(インディア)」タイムと
呼ばれています)
さて、今回はどうでしたか?
皆さんのご感想・リクエストも
お待ちしておりますー。
メールか伝言板にお気軽にどーぞー♪
航空管制に使われる単位
事象 使用単位 解説
高度 ft(フィート) 1フィート=0.305m
高度 FL(フライトレベル) 1FL=100ft(通常10FL単位)
最低高度14000ft以上で適用
長さ inch(インチ) 1インチ=2.54cm
距離 NM
(ノーチカルマイル)
1NM=1.852km=一海里
速度 NT(ノット) 1ノット=1.852km/h
重量 lb(ポンド) 1ポンド=0.454kg
時間 Z(ズル タイム) 世界標準時




参考文献

管制方式基準 (運輸省航空局 空制第5号:鳳文書林出版)
AIM JAPAN (運輸省航空局/気象庁監修:日本航空機操縦士協会 著)