航空講座

第三回:航空機の燃料

はーい♪皆さん、お久しぶりです、
いぶきです。
ナニヤラ託丸の引っ越しとかで、
この講座の更新もなおざりになってたもんねぇ。
・・・・、九州から北海道・・でしたよね?
日本縦断ですね。
車で自走して行ったらしいわよ☆(笑)
今回は、割とみんなに知られていない
航空機の燃料についてです。
結構意外に思う事も有ると思いますよー。
意外も何も飛行機ってガソリンで
飛んでるんじゃないの?誰でも知ってるわよ?
うふふ。そう思うでしょ?
でも、その答えだと
半分当たりだけど半分ハズレなのよね。
えー!?燃料がガソリンじゃない飛行機
なんて有るんですかぁー?

「航空燃料100ナントカ」とか言ってハイオクガソリン
宣伝してるガソリンスタンドも有るじゃない、
あれはデマカセな訳?

別にデマカセじゃ無いわよ、
実際問題、ガソリンの航空燃料は
ハイグレードのハイオクガソリンだもの。
じゃー、やっぱり飛行機の燃料はガソリンじゃない。
もー、いぶきさんそうやってスグ人をかつぐんだからぁ。
あら?かついでなんていないわよ?
さっき言ったでしょ?「飛行機の燃料は全部ガソリンだ」
っていう答えじゃ半分不正解だって。
ガソリンを使わない航空機も存在するのよ。
しかも、とっても身近に。
えー?ガソリンを使わない身近な飛行機ぃー?
・・・。
?????
松の油で飛ぶとか?
あははは・・・。楓ちゃん古い事知ってるのねー。
戦時中じゃないんだから松根油なんて使ってる
機械は無いわよ。
じゃ、まずはレシプロ・エンジンの燃料について
話すわね。
レシプロ機の燃料は楓ちゃんの言うと通り
ガソリンなんだけど、まずは右の表を見て。
これがレシプロ機に使う燃料の一覧表よ。
ちなみにレシプロエンジンというのは、
ピストン運動するエンジンという意味なの。
だから単にピストンエンジンとも言うわね。
これは車のエンジンと基本構造は同じだから
分かりやすいわね。
へえー。
一種類じゃ無いんですね。
こんなに種類があるんですかぁ・・。

そう。でも、日本では「100」等級の物しか
無いの。世界的に見ても、「100LL」と「100」が
大勢を占めてるわね。そのほかの物は
まれにしか見ないわ。
うーん・・。
所で「100」とか「115」とかってどーゆー意味?
おっ、楓ちゃんナイス質問ね。
その数字は一般に言う「オクタン価」を表す数字なの。
この数字が大きいほどアンチノック性が高い、
つまり、高出力をかけてもノッキングを
起こしにくい燃料という事になるわね。

ノッキング=デトネーションとも言う異常燃焼。
エンジン破損の恐れが極めて大きい。

へぇー!じゃぁ、オクタン価が高いイイ燃料って
燃えにくいんだ。
鋭いわねー。そう、その通りなの。
オクタン価は「イソオクタン」と言うアンチノック性が高い
燃料の含有量と考えていいわね。イソオクタンが8割
入った燃料は「80」という具合ね。
だから「100」以上の燃料は物理的には
あり得ないんだけど、「115」とか言うのは
「パフォーマンス・ナンバー(出力価)」と言う値なの。
これはイソオクタンに「四エチル鉛」と言う
アンチノック材を更に大量に添加した強力なガソリンの値を
「イソオクタン100」の燃料と耐爆性を比較した数字なの。
グレード(等級) 鉛含有量
cc/galon
80
(旧80/87)
0.50
100LL
(旧91/96)
2.00
100
(旧100/130)
3.00
115/145 4.60
所で「100LL」の「LL」って何ですか?
ああ、ソレね。「LL」は
「Low Leaded」の略号で、
「低鉛」と言う意味なの。
航空ガソリンは今でも無鉛じゃないのよ。
でも、出力価が大きいから仕方ないの。
だから、もし自動車用の燃料を使って
飛んだとしたら、命の保証は無いわね。
・・・・。空中でエンジン停止かー・・・。
ぞっとするわねー・・・。
だからガソリンにわざわざ色を付けて
等級を間違えない様にしてるんですね。
そうね。等級の一番低い「80」が赤いのは
注意喚起の意味合いが強いわね。
ちなみに違う燃料を混ぜるとナニ色になると思う?
うーん・・・・・・。
何だろ?
答えは透明。
色が無くなっちゃうの。
へぇ〜。不思議〜。
さて、レシプロと来れば、次はジェットね。
ジェットエンジンには主に飛行機に
使われる「軸流式」と、主にジェットヘリに使われる
「遠心式」に大別されるの。
飛行機に使われる形式には更に
「ターボ・ジェット(ピュア・ジェット)」
「ターボ・ファン」「ターボ・プロップ」なんかが
有るけど、今回は燃料の話だから、
ジェットエンジンについては又の機会にしますね。
さーて、質問よー。
ジェットエンジンはどんな燃料を使ってると思う〜?
うーん・・・。
すごく高級なガソリンと思ってたんですけどぉ、
違うんですよね?
なんだか分かんないけど、「ジェット燃料」って言う
位だから、高級な燃料なんでしょうねー。
うふふ・・。
実はねー、ジェット燃料は灯油なの。
う、うっそー!?
と、灯油って、あの、ストーブとかに入れる
灯油ですかぁ?
そ、あの灯油よ。
少し添加剤とか入ってるけど、
ほとんど家庭用の灯油と一緒なの。
成分的にはケロシンって言うんだけどね。
家庭用の灯油でもジェット機は飛ばせるのよ。
何か不思議な感じよね。実際、ジェットエンジンの
近くに行くと石油ストーブの匂いがするのよ(笑)


ジェットエンジンについては又詳しくやるけど、
ジェットはコンプレッサーを廻して、高圧縮を掛けた空気に
燃料を噴射するのが燃焼の基本原理なの。
高圧縮空気はとても燃えやすいから、燃料は
粗末な物でもいい訳。かえってガソリンみたいな
揮発性の高い燃料を入れたら大変なことになるわね。
代表的なジェット燃料には二種類有るの。
右の表を見て。
えーとぉ・・。
何で軍用のジェット燃料はガソリンが
混ざっているんですか?
ああ、それは戦闘機なんかの高機動機が
アフターバーナーを焚いたりするからでしょうね。
だから、エンジンの痛みも激しいらしいわ。
あ、アフターバーナー・・・。
所で、航空燃料ってどれくらいの値段なんですか?
私の知っている航空会社の場合、税別で
レシプロ用のAVGASー100(緑)がリッター190円。
JET−A(民間用)がリッター94円ね。
これはかなり安い値段らしいわ。
はー、結構するのねー。
で、飛行機って燃費はどれくらいなの?
民間用 軍用(自衛隊)
名称 JET−A
(JPー5)
JET−B
(JP−4)
概要 ケロシン系 ワイドカット系
成分 家庭用灯油と
同様の成分
灯油とガソリンの
混合燃料
比率は1:1
そうね、機種によって千差万別だけど、
飛行機の燃費は普通は距離じゃなくて時間計算なの。
上空は必ず風が吹いているから、風向風速に
よって大きく燃費が変わるものね。
でも、そうね、距離換算でセスナ172型機でリッター6キロ。
ボーイング747型機(俗に言うジャンボ機)でリッター60m
ってトコかしら?
リ・・・リッター60m・・・・。トホホ。

それじゃー、又ねー!!







参考文献:

航空工学入門(日本航空技術協会)
航空用ピストンエンジン(日本航空技術協会)
私の整備ノート@航空発動機(日本航空技術協会)